ストリートカルチャーの味方、弁護士 Jeff Gluck

ストリートに溢れるグラフィティやロゴを守り、数々のデザイナーやアーティストたちに頼られる弁護士

ファッション
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デザイナーやアーティストたちの意識とは往々にして、常にクリエイティブに向いているもの。日常生活や人とのつながり、クリエイティブアーカイブや最新資料など、ありとあらゆるものからインスピレーションや新素材、デザインソースを探している。そしてそのアイディアを練る時間、クリエイションを生み出す労力こそが、ブランドや作品の魅力を形づくる最も重要な要素のはずだ。しかし本人しか知り得ないセンスと感覚で、細心の注意を払ってグラフィックを配置したTシャツのデザインもアートワークも、彼らの手を離れ量産されたり露出されれば多くの人々の目にさらされる。そしてこの段階で法的に守られていないデザインやアートワークは、イミテーション、ブートレッグ、又は“オマージュ”という言葉を借りたノックオフ品のターゲットになるリスクが付いてくるのは否めないのだ。特にストリートカルチャーという領域のクリエイティブマインドたちにとって、ビジネスプランやストラクチャーというものは重要視されず、見落とされがちなことがほとんどと言ってもいいだろう。デザインやアートワークを無断で使用されてしまうケース、そしてまたその逆も然り。それゆえに論争や、デザインの使用停止通告書などがシーンに溢れているのである。しかし、もし君が商売をするつもりもなく始めたモノ作りが、たちまちビジネスとして動くことになったらどうだろう? ビジネスプランを指南するだけでなく、自分の気持ちと意思を理解してくれる人物はどこにいるだろうか?

「D*FACE」(ストリートアーティスト):「パブリックな場所で活動するビジュアルアーティストにとって、著作権侵害のターゲットになることはとても簡単なんだ。僕の後ろ盾になってくれて、注意を促してくれるJeffの存在は僕に安心感を与えてくれる。」

弁護士としての知識と経験、そしてストリートファッション、カルチャー、アートへの情熱を併せ持つ「Jeff Gluck」は、ストリートブランドやアーティストにとっての駆け込み寺的存在。〈Roberto Cavalli〉や〈Moschino〉といったラグジュアリーブランドを相手とした訴訟も手がけ、知的財産の使用権問題、アーティストの権利、デザインのコピーライトなどにフォーカスした案件を数多く担当している。今回『HYPEBEAST』はそんな彼にインタビュー。彼のクライアントたちが直面したケースなどをもとに、現代のストリートシーンとクリエイティブたちが知っておくべきエピソードを聞かせてくれた。

気をつけて欲しいのは、コピーされた、無断使用されたと感じても、感情のままソーシャルメディアなどに投稿しないこと。まず弁護士に相談するんだ。賢く動かなくてはいけない。

どのようにして現在のようなストリートウエアブランドやアーティストとの案件を担当するようになったのですか?

自分の弁護士事務所を始めるときに、共通の友人を通して「Curtis Kulig」(アーティスト/フォトグラファー)を紹介されたんだ。彼が僕のクライアントになることになって、その後他のアーティストやブランドを紹介してくれたことで全てが進んできた。僕はこのシーンで彼らがどれほど頻繁にコピーされたりデザインを盗まれたりしているかに気づいたと同時に、他の誰も彼らの手助けをしていないことを知って、そういった案件に集中することにしたんだ。

ストリートカルチャーとあなたを結びつけるものは?

若い頃からカウンターカルチャーやスケートカルチャー、そしてそれらとファッションやアートとの関わりに興味を持っていたんだ。1990年代後半に「NYU(ニューヨーク大学)」に通っていたんだけど、ダウンタウンの〈Supreme〉、『Clientele』、〈SSUR〉や『Union』に毎週末足を運んでいたよ。そこにはいつも彼らが誇りにしているもの、カルチャー、アティチュードがあって、学生の僕に感動を与えてくれていた。だからこそ今そういったシーンにあるブランドやアーティストと一緒に働けることはすごく嬉しいことなんだ。

「Russ Karablin」(SSUR):「Jeffは法律に関して頼りになるだけじゃなく、アーティストの置かれている環境に深く聡明な理解をしてくれる人物だ。我々は彼の存在にとても感謝しているんだ。」

スタートしたばかりのブランドによくある失敗や問題点を教えてくれますか?

多くのブランドは“ベッドルームから始めました”というような会社。デザイナーは自由度が高くオーセンティックで、生きたストリートの空気感をデリバリーしている。問題が起きるのは、一夜にしてそのブランドが注目の的となるような急な変化に直面したときなんだ。組織を急いで構築しなくてはいけなくなるから、チャンスを見落としたり、商品をオーダーしすぎたり逆に足りなかったり、不利な契約をしてしまったり、知的財産の権利を守れなかったり、運送やロジスティックの不備が出たり、パートナーと争うことになったり……。会社の基盤を整えること、トレードマークやコピーライトといった権利を明らかにしておくことは、ものすごく大切なことなんだ。

ストリートカルチャーでよく起こる案件とはどんなものなのですか?

僕が力を入れている分野は知的財産に関する訴訟なんだ。その中で一番多いのはコピーライトに関する問題。これは、作者の許可を取らずに商業目的でアートワークをコピーされたり不当に利用されたときに起こるもので、現代のグラフィティーアートにおいて頻繁に発生する問題なんだ。最近では〈Roberto Cavalli〉に対して「Revok」、「Reyes」、「Steel」の弁護を担当したし、「Rime」の〈Moschino〉に対する訴訟も担当したよ。

「KESH」(アーティスト):「Jeffは仕事をやり遂げてくれる人だよ。彼はクライアントの気持ち、自身の作品に対する思い入れやコネクションを尊重してくれる。ただの盗まれたアートという一般認識じゃなく、それぞれのケースに気持ちを込めて望んでくれるんだ。」

訴訟はどうやって始まるのですか?

まず代理人や弁護士が訴状を提出することから始まる。アートワークやデザインなどが不当に利用されたり模倣されたという知的財産の侵害を裁判所に訴えるんだ。気をつけて欲しいのは、コピーされた、無断使用されたと感じても、感情のままソーシャルメディアなどに投稿しないこと。まず弁護士に相談するんだ。賢く動かなくてはいけないんだよ。

弁護士を雇うのは莫大な金額がかかるのでは? お金を払わず相談することは可能なのですか?

訴訟案件の場合、成功報酬のみで引き受けることが多いんだ。クライアントにお金が支払われてはじめて僕が報酬をもらう。そこに追加の金額などは入っていないよ。僕の裁量で、クライアントの仕事を不正利用した企業側に弁護料を払ってもらうという感覚かな。

昨今のストリートでは、ロゴやグラフィックの“パロディー”を多く目にしますが、どうしてそのようなものが訴えられずに存在するのですか?

そこには明確な規定があって、パロディーはフェアユースという条件のもと、基本的には著作権侵害にならないとされているんだよ。(※アメリカ合衆国の著作権法に基づくコメント)

ここ数年のインターネットの発達や溢れる情報が、ファッションに関する司法の面に影響していると感じることはありますか?

インターネットは明らかにいろいろなことを変えたよね。今まで知り得なかった情報に手が届き、デザイナーたちのクリエイションの大きな手助けになってきた。同時に、それをコピーしたり盗んだりすることもとても簡単になってしまったけどね。

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