2016年 ベスト ストリートウエア ブランド

トレンドという言葉がつきものなファッションに於いて、1年中その注目度を保ち続けるのは至難の技。ストリートウエアブランドという言葉ももはや曖昧な表現ではあるが、間違いなく世界中に無数のレーベルが存在しブランドの海と化している中で、より広域な消費者に支持されるブランドでいるためには、よりダイナミックで話題性のあるプロダクトを発信し続けながらも、レーベルとして芯のブレない在り方が必要とされている。様々なジャンルが交差し、ハイとカジュアル、ラグジュアリーとストリートの定義や境界線も、お互いが作用しあって成り立っている現代のファションシーンだが、そんな現状を理解しつつ、2016年のベスト ストリートウエア ブランドと呼べるレーベルを『HYPEBEAST』が選出。今年欲しくてたまらなかったアイテムを出したブランドはいくつあっただろうか？

Brain Dead

マニアックなコミックブックや、音楽など、オフビートなサブカルチャーへのパッションを持つKyle Ng（カイル・ウン）とEd Davis（エド・デイヴィス）が、自分たちの奇妙なアイディアを形にすべく2014年にスタートした〈Brain Dead（ブレインデッド）〉。2016年には2人の幅広い音楽のテイストを反映させたレコードレーベルもローンチしている。独自のカルチャーとも言えそうなアート、音楽、そしてファッションを発信し続ける彼らは、今年も多くのカルト的ファンを興奮させ、ストリートファッションに彼らならではのカテゴリーを築いている。

DUST MAGAZINE – DUST CAPSULE / WEARABLE PAGES

ベルリンとロンドンを拠点に、年2回発行されている『DUST MAGAZINE』は、新たなアーティスティックプロジェクトとして、“DUST CAPSULE / WEARABLE PAGES”と題したクロージングラインをスタート。第一回目のコレクションでは、『DUST』の8号目に登場した著名なアーティスト、Peter De Potter（ピーター・デ・ポッター）による“Young King New Castle”をプリントしたアイテムをリリースした。マガジンの発行同様、年に2回のリリースとなるこのファッションアイテムのローンチに、多くのアートを愛するストリートキッズが注目している。

KITH

スニーカー、そしてアパレルアイテムを扱うストアとしてスタートしたのち、プライベートレーベルとしても展開されるようになったRonnie Fieg（ロニー・フィーグ）率いる〈KITH（キース）〉。2016年も〈Nike（ナイキ）〉や〈ASICS（アシックス）〉をはじめ、アパレルやフットウエアなど様々なブランドとコンスタントにコラボレーションを続けた。特にほぼ毎週のように人気ブランドの別注スニーカーをリリースしていたところからも、〈KITH〉の勢いが感じられる。さらに5周年記念として先日ローンチしたアパレルコレクションも、多くのブランドとのコラボアイテムをラインアップし、その勢いは加速するばかりだ。

Palace

2010年に、スケートボーダーLev Tanju（レヴ・タンジュ）によってスケートチームとして形成された〈Palace（パレス）〉。その後スケートカンパニーとして、そしてストリートウエア旋風を巻き起こしたブランドのひとつとして成長していった。90年代のスポーツウエアとブリティッシュサブカルチャーにインスパイアされたデザインは、ブランドのシグネチャーである“Tri-Ferg”ロゴとともに、スケーターからそうでないキッズまで、幅広いファンを世界中に作り現在に至る。2016年も、〈adidas Originals（アディダスオリジナルス）〉や〈Reebok（リーボック）〉との人気コラボレーションを打ち出してきた〈Palace〉は、ストリートの人気ブランドとして確固たる地位を築いたと言えるだろう。

VLONE

A$AP Rocky（エイサップ・ロッキー）、A$AP Bari（エイサップ・バリ）、〈CLOT（クロット）〉のEdison Chen（エディソン・チャン）が手がける〈VLONE（ヴィーローン）〉は今年、瞬く間にストリートの注目ブランドとして認識された。エクスクルーシヴなアイテムをリリースし謎めいたレーベルとして噂されてきたのち、2016年に数回にわたるポップアップイベントとウェブサイトによって、多くの人がそのクリエイションを目にすることとなった〈VLONE〉。〈OFF-WHITE™（オフホワイト）〉、〈NikeLab（ナイキラボ）〉、〈No Vacancy Inn（ノー・バカンシー・イン）〉といった人気レーベルとのコラボレーションもその存在感のキーとなったはずだ。

Noah

長きにわたり、〈Supreme（シュプリーム）〉のクリエイブディレクションを指揮してきた Brendon Babenzien（ブレンドン・バベンジン）により、2000年代前半にゆったりとスタートした〈Noah（ノア）〉。2015年にBrendonはこのブランドに専念するため〈Supreme〉を抜け、〈Noah〉で自身のノスタルジーとエシカルな意識を反映させたクリエイションを展開している。サーファー、スケーター、として育ったBrendonが目指すものづくりは、サステイナブルでエシカルなビジネスマインドを根底に据えるもの。2016年にリリースされたコレクション、コラボレーションにも、Brendonらしい遊び心と良心の詰まったオリジナリティが感じられる。彼の存在が今後も多くのファッションクラウドに一歩進んだ意識を与えてくれることに期待したい。

Fear of God

2012年にデビューした〈Fear of God（フィア・オブ・ゴッド）〉。学校でのファッションの勉強や、ブランドでのトレーニングを受けた経験のない父親であったJerry Lorenzo（ジェリー・ロレンゾ）が、独学で始めたこのレーベルは、2016年の現在、 Justin Bieber（ジャスティン・ビーバー）やKanye West（カニエ・ウェスト）、Kendall Jenner（ケンダル・ジェンナー）といったセレブリティーやそのファンたちに着用される大人気ブランドとなった。そんな追い風の中にある〈FOG〉は今年、〈mastermind JAPAN（マスターマインドジャパン）〉、〈Vans（バンズ）〉、『SSENSE（エッセンス）』とのコラボレーションでも成功を収めた。さらに、2015年終盤にリリースされたミリタリーをテーマにしたスニカーブーツは、2016年に入っても尚人気の冷めない注目ピースであった。

Supreme

James Jebbia（ジェームス・ジェビア）がスケートショップ兼クロージングブランドとして始めた〈Supreme〉。ストリートカルチャーの代名詞的ブランドとも言えるこのレーベルの人気は、2016年も衰えることはなかった。パリにヨーロッパ2店舗目をオープンして話題になったほか、〈UNDERCOVER（アンダーカバー）〉、〈Timberland（ティンバーランド）〉、〈The North Face（ザ ノース フェイス）〉ほか、完売アイテムが出ないコラボレーションなど考えられないほどの人気を博す〈Supreme〉。今年は音楽バンドや日本のブランド、アーティストとのコラボレーションも話題になり、アクセサリーコレクションではレンガまで販売。更にはシグネチャーのボックスロゴ欲しさに異例の数のネットアクセスを記録するというニュースまで駆け抜けた。スケートボーディング、ヒップホップ、パンクほか、あらゆるサブカルチャー、ユースカルチャーと歩み続け、今年もストリートブランドのトップに君臨した〈Supreme〉の圧倒的な人気と存在感は、間違いなく今後も続いていくだろう。

A Bathing Ape®

数々のヒップホップアーティストの着用や、あのアイコニックなモチーフによって、ストリートウエアの定番ブランドの一つとされる〈A Bathing Ape®（ア ベイシング エイプ）〉。2016年は、ブランドの意思とは全く関係ない“アンオフィシャルマスコット”と呼ばれインターネットで炎上したYMBAPE（BAPE®を着た過激なアンチSupremeな青年。のちに逮捕）の存在然り、〈adidas〉や〈mastermind JAPAN〉との人気コラボレーション然り、過去数年に比べ、より印象的な1年であった。根強いファン、幅広いファンを持つ〈BAPE®〉の今後にも注目したい。

Anti Social Social Club

2016年は明らかに飛躍の年となったであろう〈Anti Social Social Club（アンチソーシャルソーシャルクラブ）〉。Neek Lurk（ニーク・ラーク）が展開するブランド名からも漂うメランコリックで後ろ向きなアティチュードは、そのスタートから多くのユースを惹きつけてきた。そして絶好のタイミングで『BEAMS』、〈Undefeated（アンディフィーテッド）〉、『Dover Street Market』、〈mastermind JAPAN〉などとのコラボレーションを実現し、一気に人気ストリートウエアの座に上り詰めた〈Anti Social Social Club〉は、音楽活動もスタート。インターネットの時代を巧みに駆け抜ける、注目度トップクラスのブランドだ。

さらに特筆すべきブランド

SOME WARE

アーティストCali Thornhill DeWitt（カリ・ソーンヒル・デウィット）とBrendan Fowler（ブレンダン・ファウラー）は今年、2人のコラボレーションブランド〈Some Ware（サム・ウェア）〉をローンチ。アパレルウエアから音楽、そしてイベントまでを、クリエイティブなグラフィックで彩った。

mastermind JAPAN

1997年に本間正章により立ち上げられた〈mastermind JAPAN〉。活動休止を経て、変わらない美学でコアなファンを持つ同ブランドは、20周年を目前に数々の人気ストリートウエアブランドとのコラボレーションを成功させ、アイコニックなスカルモチーフと共にその存在感を増している。

424

デザイナーGuillermo Andrade（ギレルモ・アンドラーデ）による〈424（フォートゥーフォー）〉は、ロサンゼルスのストア『FourTwoFour on Fairfax』のインハウスレーベルとしてスタート。ダメージ加工や時代を反映したメッセージ性も孕んだコレクションで今年も注目された同ブランド。来日も果たしたGuillermoの今後の活動にも注目だ。

Midnight Studios

若きShane Gonzales（シェーン・ゴンザレス）が立ち上げた〈Midnight Studios（ミッドナイトスタジオ）〉も、ここ数年で瞬く間に人気レーベルとなった新たなブランドの一つ。これまで同様ハイファッションのエレメントとパンク、ユースカルチャーが入り混じったコレクションを展開した今年だが、2016年はグラフィックだけでなく、よりシルエットやコンストラクションにフォーカスしたアイテムが目を惹くラインアップ。

F.A.M.T

フランスのレーベル〈Fuck art, make tees（ファック・アート・メイク・ティーズ）〉は、2016年静かに盛り上がっていたテキスト（文字）ムーブメントの一端を担うと言えそうなブランド。現代のファッションシーンを皮肉るようなメッセージを、控えめなフォントでアイテムに落とし込む〈F.A.M.T〉の今後の“言葉”にも注目していきたい。