Interviews: 横山健が語るタモリ、アートワーク、Apple Music そして、「引退」

ロックの未来を憂う「パンク・ロック・ヒーロー」、生の歩み

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Mステやオールナイトニッポンへの出演をはじめ、次々と話題を生み出すバンドマン「横山健」へのインタビューを敢行。そこに見えたのは、ロックの未来を憂う「パンク・ロック・ヒーロー」、生の歩みだった。インタビュー最後には、横山が愛用する数珠ネックレスの意味についても答えているので、ぜひチェックしてほしい。

自分は「クズ」だと思う

「ハイスタで、すごくいい思いをして、30代になってからでしょうか。自分が『クズ』だと意識し始めたのは」。最新アルバムのアートワークについて触れた時だった。少々早口。ライブのスピーチで聞く、おなじみの良く通る声で、時折、慎重に言葉を選ぶため沈黙しながらも、こう続けた。「たとえ刺青を隠していたとしても、普段のボクから出ているムードって、例えば『Hi-STANDARD』を知らない人がいたとして、決して奇抜な服装してなくても、タダ事ではないと思うんですね」。

横山健、1969年生まれの45歳。2児の父。90年代に「メロコア」や「メロディック・パンク」と呼ばれるミュージックシーンを引率し、2011年には再始動を果たした伝説的なパンクバンド「Hi-STANDARD」のギターリストだ。そんな横山は、ソロ活動時のバンド名「Ken Yokoyama」として最新アルバム『Sentimental Trash』を発売したばかり。すでに6枚目のソロアルバムとなり、約25年以上の間、第一線で活躍する、まさに「パンク・ロック・ヒーロー」だ。にもかかわらず、何度もインタビュー中、自らのことを執拗なまでに「クズ」と表現する。いったい、なぜなのか?

「社会一般からしたら、やっぱりロックンロールをして生きている人間なんてクズだと思うんです。今回、『Yellow Trash Blues』(アルバム収録曲)にも書いたんです。ステージ上にあがるとまるで、ボクが王様にでもになったかのように、ファンが注目してくれる。もちろん、自虐的な意味の歌詞です。でも、一方で地元の駅前を、一人の人間として歩いているときに、他の人たちに本当にごめんなさいって思ってしまうんですよ。なぜかと言われれば、今、理由を説明しようとしても、説明できない。それくらいクズなんです。なんでかそう、感じるんです。そんなクズである自分の姿が(最新)アルバムのアートワークにも、描かれているんですね」。アルバムのカバーデザインを手掛けているのは「赤ちゃんのときから知っている地元(杉並区)の後輩」と横山が語るグラフィックデザイナーの「ダイスケ・ホンゴリアン」。横山自らがギター担当としても参加するハードコアバンド「BBQ CHICKENS」のボーカルでもある。「『Ken Yokoyama』のアルバムデザインやTシャツデザインをほとんど手掛けているし、バンドも一緒にやっているから、常日頃から一緒にいるんです。だから、僕の今の”モード゛というのを、作品に関係なくわかってくれているんです」。
「BBQ CHICKENS」としての活動現場の他にも、電話やメールで「俺、最近こういうのが好きなんだよね、お前こういうカルチャー分かる?」など頻繁に気になったデザインについて、連絡をとりあい情報を共有しているのだという。「だから、ホンゴリアンは僕が昔からハワイモノだったり、トロピカルモノが好きだということを完全に把握しているんです。そこで今回は、ティキのあるバーに焦点をあてたんですね。ジャケ写に描かれているのは、ティキバーで明け方まで飲んで酔っ払った、クズでだらしない自分です。Sentimental(センチメンタル)になっているTrash(トラッシュ/「ゴミ」「クズ」の意)が描かれています」。

横山はアルバムのアートワーク発注の前に収録予定曲を「ダイスケ・ホンゴリアン」に聴かせるという。つまり、アルバム制作の最後にあたるのが”朋友”による、そのアートワークづくりだ。「歌詞の世界感と音の世界感がもしかしたら最終的に、アートワークでつながっているのかもしれない。タイトルも含め結果的に、ジャケ写のアートワークで一緒になっているのかもしれませんね」。

活動はもうそんなに、長くない

同アルバム内で大きな支持を集めている曲の一つがシングルカットもされている楽曲“I Won’t Turn Off My Radio”(以下、Radio)だ。

MTVに殴られ
インターネットに背中を刺され
お前はすっかり時代遅れのアイコン
それでもオレにはまだ聞こえる
お前のかすかな電波
(訳詞)

もはや“時代遅れなモノ”の象徴としてのラジオとロックアイコンとしての自らを重ね合わせつつ、”I Won’t Turn Off My Radio”(まだまだヤルぜ、おれは自分ラジオを切らないぜ)と歌う、まさにSentimentalかつ力強いメッセージのこもった楽曲だ。しかし、そのturn offしないという決意の裏には、横山がturn off、つまり”終わる”、転じて”引退“を考える機会があることも示唆しているのだろうか。

「最近まわりにも話す機会が多いんですけど、もうそんなに先長くないなって思うんですよ。今、45歳という年齢なんですね。それこそ、Radioの歌詞にも書きましたけど、だいぶ古い感性の人間になってきているんだなって感じるんです。それだけ今、新しい感性がどんどん出てきているのを、感じるんです。どう考えても、僕は彼ら(若いバンド)のような音は鳴らせないって。そりゃ模倣はできますけど、絶対嘘くさいつくりになるし、近づけることもできない。自分の……(しばしの沈黙)……自分の思った通りの言語で音楽をならそうとすると、あたりまえのように自然と古いものになってしまうんですね。それを認めざるをえないんですよ。少しそれを認める。そういった意味で、いつかは(自らのRadioを)切らざるをえない日はきますよね」。

真っ直ぐとインタビューアーを見つめながら「ちょっと言葉遊びになってしまうかもしれませんが」と前置きした上で自らの死生観を続けた。「『人間いつかは死ぬ』って常に思っているんです。しかし、ネガティブな意味ではなくむしろ、それをポジティブに考えているんですね。平等に死は訪れるし、僕だけ長生きしたいとも思わないんです。そういう、人間なんです」。インタビュー中「無人島にいくとしたら何を3つ、もっていく?」という質問への答えを笑い飛ばす様もまた、死をポジティブに受け入れていることを裏付けていた。「これ夢のない話ですけど、自殺するための薬をもっていきます。だって俺一人で生きたくないですもん。まったく斜め上の答えですけど、無人島にどうしても行かなければならないなら、ついた瞬間に死にたいですね。はははははははは(笑)」。

「今日はMステ、攻めっから」

2015年7月10日、横山健はデビュー以来初めて地上波で演奏を披露し、出演後はTwitterのトレンドワードを席巻するなど、大きな話題となった。しかも、出演したのは日本を代表する国民的音楽番組「ミュージック・ステーション」(テレビ朝日系列/以下、Mステ)。Mステ出演やタモリという人物はどのように横山の目に写ったのか。「そりゃ、緊張しましたよ(笑)。バクバクというよりもちょっとボーっとしてしまったんです。タモリさんで、さすがだなーと思ったのが、“誰も拒絶しない空気”ですね。すぐに誰とでも話せるんです。だから僕もタモリさんと話してるときが一番リラックスできました。テレビ局内で初めて挨拶したのは、ゲネプロって呼ばれる、通しのリハーサル。実は、タモリさんが昔が住んでいた家が、僕の地元なんです。褒められた話ではないですが、中学校をサボってタモリさんが『笑っていいとも!』に向かうために自宅から車に乗る姿を何回も見ていたことがあったんです。その話を本人にしたら、呑み屋で隣になったおじさんぐらい楽しそうに、気軽に話してくれるんですよ。本当にすぐに打ち解ける。あの人の才能ですね」。

タモリとの、とっておきの思い出を嬉々として続ける。「僕の出前の直前が、『コンチータ(Conchita Wurst)』さんという歌手だったんですね。リハーサル中、彼女が“Rise like Phoenix”(ライズ・ライク・フェニックス)という曲を唄う姿をモニター越しにタモリさんと一緒に聴いていたんです。そしたら横でタモリさんが『この人なまってるね~』っていうんですよ。
(以下やり取り)
タモリ:『フィーネックッス、っていってるよ。フィーネックッスって。なまってるなー』
横山:『おそらくですけど、カタカナで書くとフェニックスですが、アメリカの発音だとフィーネックッスだと思うんですよね』
タモリ:ほっーーーー、フィーネックッス。なるほど、フィーネックッス。
俺、どっかでこれ見たことあるなーってその時思ったんですよ。そしたらね、完全に『空耳アワー』なんですよ! ははははははははは(笑)。『空耳アワー』で実際に隣にいるみたいな感覚で。あれは、僕だけが満喫できましたね」。

当日の出演者には、司会のタモリのほかにも、現在のチャートを席巻する大人気グループの「NMB48」や「三代目 J SOUL BROTHERS」(以下、三代目JSB)の面々も連ねた。「正直、昔はアイドルとか、歌唱に向かう人とか、好きじゃなかったです。自分とは関係のないモノと思いたかった。隠さずに言うと、キレイなオネ―ちゃんをテレビで見るのも好きだから、アイドルが本当に嫌いとは言えない自分もいたんです。その上で(自分と芸能界を)線引きしたかった。彼らを認めたくなかった。それが、同じMステという土俵に上がる以上、彼らが本気でやっていて人々から支持をあつめている以上、その事実をちゃんと認識しないと、Mステには自分の口から『出たい』って言えなかったんです」。

心境の変化には、ある決意があった。「今、日本で支持されているアーティストのことを悪口を言うのは簡単なんです。『今のチャートは嘆かわしい』と言うのは意外とロックっぽくて、容易ですし。『オリコンチャートを見るとロックバンドは一つも入ってなくて、全部見事にEXILE、AKB、ジャニーズ、アニメソング……もう終わってる。嘆かわしい』。そういった状況をロックを生業にする人たちは、良く批判するんです。実際、僕も昔はそういうことを言ってました。でも言うのは簡単だけど中からひっくり返したいって、今は思っているんです。せめてロックは彼らに負けているわけだから、肩を並べるところまでは」。横山の意識の変化をさらに後押ししたのが、皮肉にも、かつて「嘆かわしい」と語っていた”彼ら”だった。ミュージックステーションの本番終了後、「NMB48」の山本彩や三代目JSBの面々が楽屋に訪れ、ファンであることを伝えたのだ。特に、三代目JSBの登坂広臣が「勇気を出して写真撮ってもらいました」と「#俺の青春時代」のタグをつけてインスタグラムで披露した横山とメンバーの集合写真は人々の話題をさらった。「(俺のこと好きなら)もっと先に言ってよーーー!! って(笑)。芸能界でも、ダンサーでも、アイドルでも、表に出たい人は根っこの部分で結局一緒だと思いました。芸能界だったら芸能界、ロックだったらロックのマナーがある。その中で人格形成が多少付け足されているだけなんだと。そこの意識の変化は軽々しいものです。今、三代目JSBって言葉聞くとまるで、MY MEN(マイメン/『仲間』の意)のように感じますからね(笑)」。

「Apple musicとかには、現状は登録していません」

「社長としての名刺ですか? 一応あります(笑)。でも、全然持ち歩かないですけどね」。横山はバンドマンとしてだけでなく、実は、インディーズ音楽レーベル「PIZZA OF DEATH」の社長としての名刺も持つ、稀な存在だ。一レーベル社長として、Apple MusicやSpotify、LINE MUSICなど、聴き放題の音楽ストリーミング・サービスに関してはどう考えているのか。

「今、『PIZZA OF DEATH』としてストリーミング・サービスに乗る気はありません。まだ、参加する意義や利益が見いだせていない。後ノリでいいと思うんです。否定もしませんが、ユーザーからの需要があれば決めます。ミュージシャンとしてのエゴも、またレーベルオーナーとしてのエゴもそこにはないです。ただ、大事なのはそこから『どう思うか』ってことだと思うんですよ。CD屋さんが、つぶれる可能性だってある。ユーザー目線で話すとすれば、あそこのCDショップを守りたいっていう意識が出るのであれば、それは大したもんですよね。僕もそこに手を貸したいし、そもそもモノは手に取って確かめたい。だから、個人的にもストリーミングサービスには、現状、登録していません。もちろん、その便利さを(頭ごなしに)否定していたら自分が身動きできなくなる。今は、様子をみている段階ですね」。

言葉の端々から“音楽”に対しての真摯な姿勢が垣間見れる。「『PIZZA OF DEATH』としては自分たちで興奮はうみだしていかないという気持ちがあるんです。どんどん発想して、形にしたいんです。確かに、こう見えて、意外と音楽に対してピュアなんですよね(笑)」。

EXTRA TRACK:首に付けている数珠ネックレスの意味は?

「うちのカミさんが趣味で自分用のアクセサリーを作っていたんですよ。3、4本あるのかな。特にミサンガのように、特別な想いをこめてるとかってわけでもないんです。カミさんが作ってくれたからつけてるって感じ。でも、良くネットで『横山健モデル』とかいってタイガーアイ(パワーストーン)の数珠売ってるサイトとかありますよね? 全然、違います。木の素材でできてるんですよ。タイガーアイで商売しようとしてるやつ、これ読んだら商売替えなきゃですね(笑)」。

「横山健」待望の6枚目のアルバム『SENTIMENTAL TRASH』(2015年9月2日リリース)は現在、発売中。価格は2190円(税抜)。詳細は、こちら

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Photographer
Yusuke Yamatani
Interviewer
Daichi Sasa
Text
Daichi Sasa

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