相澤陽介: BURTON THIRTEEN が魅せる新しい世界観とは?
〈White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)〉のデザイナー「相澤陽介」氏が手がける〈BURTON THIRTEEN(バートン













〈White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)〉のデザイナー「相澤陽介」氏が手がける〈BURTON THIRTEEN(バートン サーティーン)〉の2シーズン目となる2015-16年秋冬コレクションが発表された。“雪山と街の境界線をなくす”ようなアーバンなコレクションが印象的な同ライン。相澤氏自身が「アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ」の本『夜間飛行』を読んでインスパイアされたという今回のコレクションに関して、話を伺った。
—昨年の発表から2シーズン目となる〈BURTON THIRTEEN〉ですが、改めて同ラインのコンセプト、そして〈BURTON〉内での位置付けを教えてください。
コンセプトとしては、“スノーボードをファッションとして楽しむ”という部分を一番に重要視していて、見た感じや着た感じがかっこいいと自身が最初に感じるブロダクトを作っています。〈BURTON〉内での位置付けに関してですが、〈AK457〉のようなバックカントリーを楽しむラインがあれば、〈ak〉のようなプロフェッショナルラインとさまざまな物があります。〈BURTON THIRTEEN〉は、昔スノーボードをやっていたけど、辞めてしまってこれから復活したい……そう思っていた世代の人たちが、これだったら普段も着られるし、雪山でも着られると思えるような日常生活ともリンクしているラインです。
—前回はカラフルな印象だったのですが、今シーズンはダークな色合いですね。今回のコレクションのインスピレーション源は何でしょうか?
スノーボードウエアに関して、普通ならばストーリーを作らないと思うんですが、〈BURTON THIRTEEN〉の場合は僕自身がやっている〈White Mountaineering〉と一緒で、わかりやすいテーマを一つもうけています。前回は北欧の少数民族であるサーミ族をテーマにしていたのですが、今回は「アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ」の『夜間飛行』という本からデザインのインスピレーションを得ました。飛行機に乗る機会が多いので、夜、空の上で見た景色をよく覚えています。そこから見た景色を“クラウドカモ”として、メンズのファッションとして受け入れやすいテキスタイルのカモフラージュを採用しました。デザインとしてもフライトジャケットで採用されるディテールを使用しています。カラーリングは、よりファッションと日常的な部分をリンクさせたいので、普段着としても愛用できるようなトーンにしていて、落ち着いたものにしています。スノーボードとしてのスペックはもちろん重要視していますが、あくまでもタウンユースのアパレルの上にそのまま羽織れるような、スノーボードウエアと普段着に境界線を引かないコレクションですね。
—自身のブランド〈White Mountaineering〉のほか、〈MONCLER W〉、〈Barbour Beacon Heritage Range by White Mountaineering〉とさまざまなデザインを手がけている中で、〈BURTON THIRTEEN〉との違いはあったりしますか? 軸は同じですか?
それぞれのブランドには歴史がありますし、マーケットも異なります。僕が仕事をするポイントとして、今まで自分が経験したことがなく、またその仕事を楽しめるかどうかです。〈BURTON〉の場合はスノーボード業界のリーディングカンパニーですよね。そうすると、自分に何を求められているのか必然的にわかるところがあります。求められていることをさらに膨らませて物作りをするという基本的な考え方として、軸はどのブランドでも変わらない。〈BURTON THIRTEEN〉の場合は、スノーボードとして滑れなければ意味がないし、滑っていれば気持ちよいというのが大事。そうするとサイズスペックが変わってくるので、作り方も〈White Mountaineering〉とは異なってきます。どうすれば快適になるのか……パンツを細くしてもただ窮屈になったら意味がないですよね。ですので、〈BURTON〉が元々持っているサイズスペックというものを1回照らし合わせて、〈BURTON THIRTEEN〉なりのシルエットにしています。
—今シーズンは、アパレルが充実していますが、アパレルで特にこだわったところはありますか?
アパレルラインは、“服”です。そのままこの格好で雪山に行くことができたり、ずっと日常的に着られるものとして意識しながら作りました。
—フットウエアは今後、〈BURTON THIRTEEN〉で展開する予定は?
〈BURTON〉にはフットウエアブランド〈GRAVIS〉があるので、それとの違いが見えてくるものは考えていきたいなとは思っています。うまくターゲットが見えれば、ですね。
—最近、雪山に行っていると伺いましたが、よく行く場所を教えてください。
今は家族も雪山を楽しんでいるので、妻の実家が近いアルツ磐梯スキー場によく行きます。日常の延長にスノーボードがあるという生活を自分自身が感じながら雪山と接しています。
—スノーボードはいつからはじめられたのですか?
どっぷりとハマり始めたのはここ5年ぐらい。10代・20代のときもやっていたのですが、それこそ〈BURTON THIRTEEN〉のコンセプトと一緒で、僕も一回辞めていたんですよね。若い頃は仕事も忙しかったというのもありましたし。でも、最近になって、家族としてのライフスタイルを充実させたいという意識が高くなってきました。趣味に時間をかけるのって大事なことだと思っています。それでもう一度、スノーボードをやり始めました。そうしたらゲレンデで滑っているだけではなくて、バックカントリーの楽しさだったりウエアの進化だったりとか、道具ひとつとってもさまざまなおもしろさが見えてきたのです。山に行く回数が多ければ多いほど、アイデアも湧いてきますよ。
—〈BURTON〉を含め、今後のプロジェクトに関して、何かあれば教えてください。
最近は、金沢美術工芸大学で非常勤講師を3年やっていて、それがおもしろいんですよ。若く、ファッション業界を目指している生徒に自分が何を与えることができるのかを考えながら大学に行っているのですが、結果的に自分自身が教えられることが多いです。今まで物作りに対してまっすぐな目線だけでやってきましたが、少しだけ横目でさまざまなことを吸収していきたいと思っています。もちろん僕はファッションデザイナーではあるのですが、そういう枠だけにとらわれず、〈White Mountaineering〉にしても、〈BURTON THIRTEEN〉にしても、もっとオープンマインドな姿勢で製作していきたいです。その姿勢を楽しむということを理想とする〈BURTON THIRTEEN〉として表現していければ嬉しいです。