HYPEBEAST Road Trips Amsterdam: ネクストジェネレーションを牽引する Daily Paper
ファッションの世界では成功を掴むために必ずしもメインストリームで知られる必要はない。トレンドが毎シーズン変わる世界で、ブランドはプロダクトやクリエイションの内容によって浮き沈みする。たとえ独自の立ち位
ファッションの世界では成功を掴むために必ずしもメインストリームで知られる必要はない。トレンドが毎シーズン変わる世界で、ブランドはプロダクトやクリエイションの内容によって浮き沈みする。たとえ独自の立ち位置を確立していたとしても、マーケットの流れに合わせ変化をつけてみようとあれこれ試してしまう。だがアムステルダム発のメンズブランド〈Daily Paper〉のストーリーからは、ヨーロッパのストリートウェアにおける彼らの現在のポジションで意義のある方向性の変化を着実なものにさせているのを知ることができる。
アメリカ領事館のすぐそばにある50年代のビルに入ると、若いDaily Paperチームが新しいオフィスを案内してくれた。ここで「Hussein Suleiman(フセイン・スレイマン)」、「Abderrahmane Trabsini(アブデラフマン・トラブシニ)」、「Jefferson Osei(ジェファーソン・オーセイ))」に出会った。みんな25歳以下だ。この3人はそろってアフリカの濃いルーツを主張し、それがブランドの核にすえられている。2008年に最初はライフスタイルのブログとしてプロジェクトは始まった。サイトを運営していく中で、プロモーション用のTシャツを作成したことがきっかけとなりアパレルの展開がスタートする。ごく自然な流れで、彼らのアフリカルーツが次第にブランドのビジュアルアイデンティティとなり、毎シーズンのデザインで重要なパートを占めるようになった。ソマリア、モロッコ、ガーナから引き継いでいるものをそれぞれが持ち込み、それぞれのアイデンティティを大事にしながらマーケットの空気感を取り入れている。
今では確固たるポジションを確立している彼らだが、スタート時から順調だったわけではない。世界的に知られる〈Patta(パッタ)〉クルーも存在していたが、日本やアメリカにおけるストリートウェアのバックグラウンドとはアムステルダムは異なり、未開拓の土壌での挑戦だった。地元でリソースや生産する機会を求められるのは珍しいこと。だが、エッジの利いたアイディアと多方面にわたるビジネス、デザイン、マーケティングのスキルによって、時間をかけながらシーンを築き上げた。
彼らがこの事業を始めてすぐに学んだことは、同じ間違いを2度くり返せば生産拠点との距離もあることからコストが非常にかさんでしまうということだ。すなわち業務の精度を上げることが必須課題であった。
「ここで何かをつくるなら、詳細に情報伝えなければならない。例えばプリントTをつくるにしても、そのサイズ、バランス、トーンやカラー、ファブリック、縫い目、何もかもわかっていなければならないんだ。そういったことは僕らにとって新しいことだったけれど、実際にやってみることで学んでいった。工場はずっと質問しどうしで、それに応えなければいけない。そういったプロセスから、いかに早く作業を進められるかを学べるんだ。」
だが問題はそれだけではなかった。オランダ人コミュニティの中では目に見える形でのマイノリティであることから、前オフィスがアムステルダムのアッパークラスのアウト・ザイト地区にあったこともあり、周囲からの厳しい視線にさらされていた。にもかかわらず、Daily Paperはコミュニティに希望をもたらすようなポジティブなアプローチを心がけている。
「ちゃんとクリエイティブであれば、いろんな方法でいつだって勝てると思っている。ディテールやメーカーについて聞いているんじゃないんだ。 ただ何をすべきで、何をすべきじゃないのかを教えてほしいだけなんだ。そのために、毎週夜7時に各オフィスがドアをオープンにしてる。立ち寄ったり、質問したり、一息いれたりしたい人を歓迎しているんだ。」
「僕らにはアドバイスを聞いたりなんかできる人が誰一人いなかったんだ。Googleがあったけど、僕は知識でお返ししたいタイプの人間なんだ。もし誰かに助けを求められたら、僕は彼らを助けるよ。インターネットで乗り切った僕の専門知識をシェアしたいんだ。」彼らのオープンな申し出にもかかわらず、どんなヘルプがあろうとも、結局は厳しい助言に行き着く。「自分でやらなければならないんだ。そういうジェネレーションだよね。DIYだよ。」
HYPEBEAST Road Tripsではその土地のフード、ファッション、デザインなど様々なジャンルのトレンドをレポート。引き続きアムステルダムシリーズをお楽しみに。