Interviews: Steve Van Doren、Tony Alva、Ray Barbee @ HOUSE of VANS Tokyo
東京初開催となった「HOUSE of VANS」のために来日したレジェント3名にインタビュー
〈VANS〉創業50周年となる2016年。アート、音楽、スケート、ストリートカルチャーをテーマに、ブルックリンやロンドンのロケーションほか、世界各国でポップアップイベントとして開催されている「House of Vans」が、日本に初上陸した。この開催のために来日したのは、〈VANS〉の創設者「Paul Van Doren」を父に持つ、ブランドの象徴的存在である「Steve Van Doren(スティーブ・ヴァン・ドーレン)」、初期「Z-boys」の主要メンバーであり、スケートボーディングの創生期を牽引した伝説的ライダー「Tony Alva(トニー・アルバ)」、そしてストリート、フラットランドスケーティングのパイオニア的存在で、ミュージシャンやフォトグラファーとしても活躍する「Ray Barbee(レイ・バービー)」という錚々たるメンバーだ。イベントでは3名のトークセッションのほか、Ray(Guitar)、Tony(Bass)、そして〈VANS〉の「Mitch Whitaker」(Drums)らによるライブパフォーマンス、Steveからオーディエンスへの惜しみないギフティング、〈VANS〉50周年記念モデルのシューズやパネルの展示などが行われ会場を隅々まで盛り上げた。こちらでは、イベント前のリハーサルを終えたレジェントたちへのインタビューをご紹介。
Steve:さあ始めよう。昔話はいろんなところで話してるから、近況でも話そうか?
- (笑)そうですね。来日はどれくらいぶりですか? Rayは数ヶ月前に「BLKTOP」のツアーで来ていましたよね?
Ray: そう。5月に来たばっかり。
Steve:僕は8年ぶりかな。初めて日本に来たのは1984年。ブレイクダンスチーム、BMXデモチームと一緒に日本の各地を廻ったんだよ。その後97年、99年、2000年にVANS WARPED TOURでも何度か来てるね。
Tony: 俺は昔はよく来てたんだけど、ここ10年くらい日本に来ていなかったよ。このタイミングで来れたのはいい機会だね。この10年で自分の中で色々な事が変わったから、また違った目線で世界を見られるんだ。
- 変わったというと?
Steve:Tonyは今いい子になったんだよ(笑)。
Tony:ライフスタイルそのものが変わったんだ。最後に日本に来た頃の自分は結構ひどかったからね。大量に酒を飲んだり体に悪いことばかりしていたし、気づけば小さなトラブルの火種をつくっていたり、アメリカ人のチンピラみたいだったと思うよ(笑)。でもそういう行為をやめてからは、ずいぶん気分が良くなったんだ。VANSのメッセージを届ける立場としてふさわしいというか、居心地いい人間になれてきたとも思う。伝えたいこともより明確になってきたし、音楽をやることもプラスに働いてるんだ。
- RayとTonyはよく音楽のセッションをすることがあるのですか?
Tony:うん。お互い違うバンドもやってるけど、今回みたいなVANSのイベントなどで一緒にステージに立つこともあるよ。
Steve:30年以上前から日本でもVANSとしてみんなが音楽に触れる機会を作ってきて、今回また久々に、しかもこんな良いメンバーを連れて東京に戻って来れたのが嬉しいね。
Tony:変な感覚だよ。いい意味でね。Rayと俺はプロのスケートボーダーで、音楽は若い頃からの趣味みたいに続けてきたことだけど、それが今になってこういうかたちで歓迎されているのはものすごく嬉しいことだし、こんなにユニークなパフォーマンスの機会に恵まれるなんて想像していなかったからね。スケートボーダーであることと同時にミュージシャンでいられることはすごくスペシャルだよ。
- 長年スケートボーディングシーンの中心に存在し続けている立場として、スケートボーディングを取り巻く環境の変化はどんなところで感じますか?タイムリーなところでは、2020年に……
Steve:オリンピックだろ? High five! Thank you Tokyo! キミたちの国は素晴らしいじゃないか。約20年前に初めてスノーボーディングがオリンピック種目になった時も、大会開催地は日本だった。それにね、オリンピックがスケートボーディングを欲したんだ。スケートボーディングはオリンピックが必要なわけじゃないからね。東京オリンピックでのスケートボーディングとサーフィンは、また若い子たちがオリンピックに注目するきっかけになるはずだよ。
Tony:これまでオリンピックはストリートの文化に由来するスポーツとは縁がなかったはずなんだ。ユース世代と結びつくストリートカルチャーとは無縁だったんだよ。でもつい最近新聞を読んでいて、日本人の若い女の子のコメントが載っていたんだけど、彼女はオリンピックに特に興味がないって言っていたんだ。世界規模のアスレチックイベントは素晴らしいけど、彼女の人生のタイムラインにはもっと他に面白いことがあるんだって。だから確かに、オリンピックはそういった人たちの興味を引く必要があるんだろうね。その一端がスケートボーディングだっていうのはおもしろいよ。
Ray:単純に、僕らがこれまで生きてきたフィールドにより多くの人たちが注目して、キッズたちのためにスケートパークが増えたりしたらいいなって思うよ。ただ、個人的にはスケートボーディングって個人の好みだと思うんだ。みんながそれぞれトリックをした中で誰が一番かって優劣をつけるのは正直疑問に感じるよ。明確なレースになるなら別だけどね。
Tony:クリエイティブな側面をジャッジするのはタフだよ。テクニックで言えば、確かにダウンヒルとかスラロームのレースでジャッジできるんだろうけど、スケートボーディングの魅力や醍醐味ってそこじゃないからな。テクニックや速さだけのスケートボーディングを見たい人が果たしてどれだけいるのか、それでどれほどの感動を与えられるのかはわからない。
- オリンピックを抜きにしても、スケートボーディングを楽しむ人が増えたと思いますが、日本のキッズたちにメッセージはありますか?
Ray:夢を追い続けて欲しいね。色んなことに感動して欲しいよ。
Steve:Rayが言うように、オリンピックがスケートパークを増やして、より多くの子供達がスケートボーディングを愛して夢を追ってくれたらいいね。
Ray:実際僕がオリンピックに期待してるのは親たちの意識を変えてくれることだね。公式種目になったことで、サポートしてくれる大人が増えたら子供達はもっとスケートしやすくなる。質問の答えに戻るけど、若い子たちには好きなことをやり続けて欲しいよ。それがもしかしたら自分が一生関わる天職になる可能性だってあるからね。
Tony:誰だって好きなことが仕事になったらいいと思うだろ? アメリカンドリームそのものさ。得意なこと、そして情熱を持ってやれることを続けて、それが自分の生活を支えられるものになるなんて素敵じゃないか。音楽でもスケートでもサーフィンでも何か他のクリエイティブなことでも、俺だって自分を表現することで生計を立てられるなんて夢みたいだと思ってるよ。金持ちになりたいんじゃなくて、人として豊かな人生を送りたいなら、好きなことを続けることだね。
Steve:男の子だけじゃなく女の子もね。男女問わずサーフィンやスケートボーディングを学校のカリキュラムに加えてる学校がカリフォルニアの外にも増えてきたんだよ。
- VANSは学校のサーフチームなどもサポートしているんですか?
Steve:そうだよ。ビーチタオルをプレゼントしたりね。WARPED TOURでもサーフィン、音楽、スケートをしているみんなをサポートし続けて22年になるんだ。
- VANSのファミリービジネスの成功を支えているものは何だと思いますか?
Steve:自分たちのルーツを大切にして、ブレずに続けることだよ。TonyやRayをはじめ、今では偉大なスケートボーダー、ミュージシャンである彼らを13歳、14歳の頃から支え続けて、今でも素晴らしい関係性を続けてこれているのはそのおかげだと思ってる。僕らは野球やサッカーやバスケットボールと深い関わりのあるブランドじゃない。だから自分たちのルーツじゃないスポーツに無駄に首を突っ込んだりはしないんだ。サーフ、スケート、BMX、モトクロスっていう個人競技、ミュージシャンやアーティストを支えるのがVANSだからね。個々のクリエイティブな表現者たちを支えるのが“off the wall”のスピリットでもあるんだよ。チームプレーヤーになれなくても、個性的で自由な一個人である子たちの可能性を讃える存在であるべきなんだ。大事なのは僕ら本来のあり方に誠実でいることだよ。