Interviews: レジェンダリースケーター Lance Mountain

「活動のすべてがスケートボーディングの延長なんだ」

アート
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80年代を代表するレジェンダリースケーターの一人として知られる「Lance Mountain(ランス・マウンテン)」。アーティストとしても活動し、特にカリフォルニアならではのプールスケーティングに特別な想いを注ぐ彼が、今回“ON MY WALL”と題したアートエキシビジョンのために来日した。これまで、スケーターを描いたペイントや、コーヒーテーブルに自分たちが実際滑っていたプールの精巧なミニチュア版を制作するなどのアート作品を制作してきた Lance。そして彼が長年構想していた、カリフォルニアのプールスケーティングシーンを他の土地に再現するというプロジェクトが今回、〈Stüssy〉によって実現されたのだ。Lanceは「Brad Bowman(ブラッド・ボウマン)」、「Steve Olson(スティーブ・オルソン)」、「Steve Alba(スティーブ・アルバ)」、「Pat Ngoho(パット・ノーホー)」といったビッグネームスケーターたちと来日し、完成したプールでのライディングを披露。その後、東京『BA-TSU ART GALLERY』でのエキシビジョンのオープニングに参加し、多くのファンを歓迎した。8月3日(水)まで開催される今回の展示では、ペイントと一緒に、日本に作ったプールの制作過程を模したコーヒーテーブルや、プールの建設に使用したツール、ビデオ記録なども展示されている。『HYPEBEAST』はショーのオープニングを前に、一時代を築いた4人のカリスマスケーターたちを引き連れ来日したLanceにインタビュー。彼は今回の来日について、エキシビジョンに合わせ「沖嶋信」氏とリリースした2冊の本、そして同行した4人についてなどを語ってくれた。

本やアート作品やプールを作るってことは、スケートボーディングに対しての愛や情熱を紡いでいくこと

まずは、このエキシビジョン会場が完成してみてどうですか?
感謝の気持ちしかないな。うちのガレージにおいてあるよりよっぽど素敵だしね(笑)。実現するまでに、ものすごくたくさんの人が動いてくれたから、本当にありがたいと思ってる。それに、何年もかけて大きくなっていったスケートボードっていう文化自体を構成する一人一人のおかげで僕は作品を作ってるし、それがこうして形になって、3年ぶりに展示ができるっていうのは感慨深いよ。

その作品、カルチャーの一部でもある、今回一緒に来日したメンバーについて教えてください。「Steve Alba」はショーのオープン前に(バンドのライブのため)帰国してしまったけど。
OK、じゃあ一人づつ話そう。まずSalba(Steve Alba)は、初めて開催されたプールコンテストで優勝した人物なんだ。僕が思うに、彼はプールスケート第二世代といったところ。最初の世代のスケーターたちが、プールでのキックターンやフロントサイドライド、エッジでのエアートリックとかを生み出した世代だけど、その後現れたSalbaが、そのそれぞれ点のようにバラバラになっていた全ての技をひとつの線に繋げたスケーターだと思ってる。プールでできる全ての技とラインを彼が作り上げたと言ってもいいくらいだよ。彼がプールスケーティングの基礎を築き上げたんだ。僕とSalbaは今でも(スケート用プールだけじゃなく)バックヤードプールが好きなんだよ。泳ぐための塗装がしてあるからそのぶん滑りにくいし、ものすごく疲れるけどね。Olson はそんなに好きじゃないはずだよ(笑)。

(笑)ではその Olson は?
彼は1978年のベストスケーターに選ばれた男だ。スケータたちがみんなで投票しあって選ぶ最高のスケーターにね。僕も彼に投票したし、多分彼も自分自身に入れたんじゃないかな(笑)。いや、冗談。Olsonはそんな票の事なんかこれっぽっちも気にしない男なんだ。そこが彼の最高なところで、だからみんなOlsonが好きなんだ。彼は僕と1歳半くらいしか年が変わらないけど、当時のスケートシーンでは2歳の差で10歳分の格の違いがあったからね。みんな彼に憧れてたよ。そして彼が、スケートシーンにパンクやロックのスタイルを持ち込んだスケーターなんだ。これまでみんなが聴いていなかった「Blondie」を聞いていたり、それまでスケーターたちが着ていなかった〈Levi’s〉とTシャツっていうスタイルも彼が始めて広まっていったんだ。当時のスケートボードに新しい風をもたらした存在だし、おかげで自分らしいスタイルでスケートボードをするっていうことにみんなが目覚めたんだ。いつも一緒にスケートしてたから、今回もぜひ彼と一緒に来たかったんだ。彼自身もアーティストだしね。

今回のエキシビジョンのフライヤーにもなっていた Brad は? すごくハッピーな人柄ですよね。ほかのみんなも凄くキャラクターが立っていますが。
そうだね、みんな実力とともに妙な個性が光ってるだろ?(笑)だからプロとしても注目されたんだ。Brad はあの調子でいろんな人とすぐ打ち解けるし、スケーターとしても素晴らしい。何といっても彼のスケートボードをしている写真がね、サイコーにカッコイイんだよ。彼は Olson よりもう少し年上で、僕もそこまで一緒にスケートをしてたわけじゃないんだ。ただ彼の写真は本当にどれもキマってるんだよ。大会での優勝経験は僕と同じで1回、2回ほどかもしれないけど、出場した全ての大会で常に5位以内にいる、ホントに本当にいいスケーターなんだ。スケートボードが進化して、たくさんのトリックが生まれてからも、彼は自分のスキルをキープアップし続けてきたんだ。

では Pat は?
Pat ね。今回の展示に彼をモデルにしたのがないのは、僕がこのアートシリーズの基になる写真たちを壁に飾っていた頃、僕もPatもアマチュアスケーターだったからなんだ。彼は僕と一緒にこの“ON MY WALL”コレクション世代のスケーターに憧れていた世代。でもとにかく連れてきた(笑)。一緒にスケートしていた仲だし、彼のスピリット、プールスケートでのスタイルが凄く好きなんだ。プールでのセッションにいつも良いエナジーをもたらしてくれるしね。それに Pat は、当時アマチュアだった1979年に、プロコンテストで優勝した素晴らしい実力も持ってる。彼もアーティストだから、スケートボードに関してのクリエイティブな目線もシェアできる、インクレディブルな奴なんだ。

5人ともそれぞれ音楽やアートなどをやっている、とてもクリエイディブなメンバーですよね。
そうだね。PatとOlsonと僕は繰り返し一緒にアートエキシビジョン(“Love and Guts”)をやっているし、Salba もバンドで音楽をやったり“Love and Guts”にも参加したよ。Brad はメイクアップアーティストとしてもフォトグラファーとしてもキャリアがあるしね。スケートボードで繋がっているこの仲間と日本に来れたのは本当に嬉しいよ。

今回、ペイントのモデルとなった雑誌のページをまとめた本『On My Wall』と、プールスケートをテーマに制作した作品集『Coffee Tables』を「沖嶋信」さんがインディペンデントで出版していますね。信さんはこれが次の世代のスケーターに刺激を与える本になればと話していましたが、Lance さん自身はこのシリーズにどんな期待をしていますか?
そもそも本の構想は15〜16年前からあったんだ。いろんな人たちに話していく中で、信がリスクを背負って出版してくれることになって、それが今回の展示にも繋がっていったんだよ。これシリーズって言ってるだろ? 実は全部でこういう本の基になるブックが12冊あるんだ。そのうちの2つが、コーヒーテーブルのブックと、僕が13歳の頃に雑誌から切り取って壁に貼っていた大好きなのスケーターたちの写真なんだ。信がいろいろ考えてくれてて、とりあえず言えるのは、まだネタはあるよってこと(笑)。

早く次のシリーズが見たいですね。
だろ?(笑)。僕にとっては活動のすべてがスケートボーディングの延長なんだ。信との本の制作もそうだけど、本やアート作品やプールを作るってことは、スケートボーディングに対しての愛とか情熱を紡いでいくことなんだ。もちろんプールスケートだけじゃなく、スケートボーディングは広くて深いし、それが世代を超えて伝わったり進化していくために活動し続けるよ。

今後のアーティスト活動で思い描いていること、成し遂げたいことはありますか?
スケートボードと一緒かな。僕たちはみんな夢を追っていて、今やっていることをより上手く、より素晴らしい出来で仕上げたいだけなんだ。やる気だけはあるから、今回のショーがまだ始まってもいない昨日から、もう次のショーのことを語り合ってるよ(笑)。

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