Interviews: Stüssy Japanのクリエイティブマインド沖嶋信

ブランドの信念を伝え日本発信の名作コラボの実現も支える「Stüssy Japan」ブランドディレクターにインタビュー

ファッション
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35周年を迎えたカリフォルニアのOGストリートウエアブランド〈Stüssy〉。 サーフウエアがトレンドだった80年代のオレンジカウンティーで「Shawn Stussy」が創設したブランドである。サーフィンのルーツを持ち続けながらも、ストリートスタイルという言い回しが存在する以前からシーンを牽引。カジュアルウエアのアウトサイダー的存在として、独自のスタイルで発展していったブランドは、気づけば西海岸だけにとどまらず世界中のユースカルチャーの一部となり、多くの人々に愛されるブランドへと成長していった。そして現在OCから9000km近く離れた東京で、〈Stüssy〉は新たな進化を遂げている。ブランドフィロソフィーを守りながらも、日本では「Stüssy Japan」として〈Porter〉や〈fragment design〉などとのコラボレーションなど秀でたプロダクトを展開。そのクリエイションの裏に存在する「Stüssy Japan」のブランドディレクターこそが「沖嶋信」なのだ。サーフタウンで生まれ育ち、研ぎ澄まされたセンスで様々なクリエイションを手がけながら、「Stüssy Japan」のブランドディレクターというポジションを確立した沖嶋氏。そんな彼にアメリカと日本の〈Stüssy〉が持つ理念、何が〈Stüssy〉をグローバルファミリーとして繋いでいるのか、そして彼を突き動かすものは何かを尋ねた。Stüssyは国籍も年齢も人種も性別も超えて、共通のマインドセットを持つ人々を繋ぐ存在

〈Stüssy〉を知ったときのことを覚えていますか?

多分86年か87年だったと思います。僕は16歳くらいで、雑誌に載っているのを見たのが最初かな。高校生の頃に、〈Stüssy〉っていうブランドの存在を知りました。スケートカルチャーに夢中で、その流れでサーフカルチャーにも自然にハマっていったという感じです。地元は静岡のサーフタウンで、89年に初めて〈Stüssy〉の服を買ったんですが、田舎だったからその頃周りに〈Stüssy〉を着ているヤツなんてほとんどいませんでした。

〈Stüssy〉というブランドが意味するもの、象徴しているものとは何だと思いますか?

一番的確なブランドとしての表現は、International Stüssy Tribeという言葉だと思います。国籍も年齢も人種も性別も超えて、共通のマインドセットを持つ人々を繋ぐ存在っていうこと。世代を超えて同じものを共有できるっていうレガシーを持ったブランドだと思います。

どうやって〈Stüssy〉で働き始めたのですか? 噂ではOG Stüssy Tribeのメンバーだと聞いていますが。

OG Stüssy Tribeのメンバーだなんて大袈裟ですよ。僕が参加した頃には、既に「Michael Kopelman」、「Goldie」、「Alex Turnbull」、「Paul Mittelman」、「James Lebon」、「Jules Gayton」、「James Jebbia」、「Eddie Cruz」そして「Hiroshi Fujiwara」など多くのレジェンドたちがそこにいました。〈Stüssy〉に加わったきっかけ? 高校卒業後、静岡でグラフィックデザイナーになったんですが、20歳くらいの時それも一時やめて、色んな仕事をしてたんです。イタリアンレストランで働いてみたりね。ちょうどその頃『Stüssy Shizuoka Chapter』がオープンして、彼らのフライヤーを作ったりカタログのデザインを手伝ったりっていうことが増えてきたんです。当時は正式な社員じゃなかったんだけど、結局96年に今も本社が静岡にある「Stüssy Japan」のインハウスとして働くことになりました。それから静岡と東京のオフィスを行ったり来たりするようになって、各地の『Stüssy Chapter』に足を運ぶことも増えたんです。しばらくそうやっていくうちに、静岡から東京にベースを移す方がどう考えてもやりやすいなって事になり、自分の拠点を東京に移しました。

沖嶋さんは〈Stüssy〉でどんな役割をしているのですか? 仕事の内容は毎回違うのですか?

〈Stüssy〉は僕が始めるずっと前から存在してるブランドです。僕はブランドの意思を日本語で伝えてるだけです。〈Stüssy〉の歴史やアイデンティティーを、自分が思うベストなカタチで日本のマーケットに伝えていくのが僕の役目だと思っています。もちろん最初からブランドディレクターだったわけじゃないくて、90年代にはフライヤー制作からPR、バイイングの仕事やコピーライトの管理など、マーケティングに落ち着くまでありとあらゆる仕事をしました。みんなが知っているわけじゃないと思いますが、僕は「Stüssy Japan」のブランドディレクターであると同時に、フリーランスでもあるんです。それは「Stüssy Japan」の内部だけじゃなく、その外の人達や仕事の手助けもできるように。そのおかげで、渋谷の松濤に『SO Gallery』といういう自分のギャラリースペースを持って次世代の若者や新しいアーティストたちをサポートすることができてる。これまで色々なものを目にして、さまざまなことを経験してきた年齢に達した今、若い世代のために力になることが大事なんじゃないかって思うんです。

昔も現在のようにクリエイティブの面での自由度はあったのですか? それとももっとアメリカの〈Stüssy〉に寄せたものづくりでしたか?

正直なところ、今も昔もほとんど変わらないと思います。StüssyのDNAをキープしつつ日本のマーケットに合うように自由にクリエイションさせてくれます。日本だけでの取り組みがあってもなくても、ブランドのオーセンティックさは変わらない。ただ伝える手段と言語が違うっていう認識ですね。

「Stüssy Japan」で手がけたもっとも誇れるプロジェクトは何ですか?

たくさんあるので1つだけ選ぶのは難しいですね。今思い出せるのは、2001年に東京の2つのクラブを使って行った“Stüssy World Tribe”というパーティーです。『Harlem』ではヒッピホップ、『Womb』ではダンスミュージック、距離も近い2つのクラブをお客さんが行き来できるようにしました。当時はStüssyとして10年ぶりにそんな大きなパーティをホストしたので本当に大変でしたね(笑)でも新しい世代もたくさん集まってくれて、思い出深いイベントになりました。今年の11月にはまた“International Stüssy Tribe Gathering 2015”という大きなイベントに向けて準備中で、すごく楽しみです。(2015年インタビュー当時)

仕事のインスピレーションは何から受けていますか?

Beautiful People。

プライベートの時間は何をしているのですか?

うーん、実際フリータイムってあってないようなものですね。写真はずっと撮ってきましたし、これからも僕の人生に大きく関わってくるものだと思います。フリーランスとして、好きなことを仕事にしている限り、仕事と遊びの境界線がありません。すごく楽しんでやっていることが、最終的に仕事に結びつくということばかりだから、すごくラッキーな立場だと思います。常にカメラを持ち歩いてるから、写真に費やす時間は必然的に多くなって、『Voice Off Stage』、『DANCE』という写真集を出版しました。『Voice Off Stage』は仕事を通して出会った日本の伝統工芸士や職人たちの姿を収めたものです。『DANCE』は友人の紹介で宮崎県のお祭りを主催している人たちと知り合い、彼らの協力のもと、古くから伝わる神楽をテーマに自費出版しました。『The Trestles』というプロジェクトもあります。南カリフォルニアにサーフィンをしに行くときに自分が目にするものや感じることをまとめているものです。

ブランドディレクターとして、〈retaW〉、〈fragment design〉、〈Porter〉、〈mastermind JAPAN〉といった日本の人気レーベルとのコラボレーションを監修してきた際、国外のオーディエンスも意識してプロジェクトを進めるのですか?

もちろんです。僕らが日本にいることで、面白いコラボレーションが生まれる機会がたくさんありますが、それをグローバルな視点で世界中のオーディエンスに良いカタチで魅せられるよう進めるのが僕たちの責任だと思っています。

現在進行中の〈Stüssy〉の新しいプロジェクトを教えてもらえますか?

今年はブランド創立35周年です。アメリカのチームとアーカイブブックを製作していて、年末にリリースする予定です。80年代から90年代の〈Stüssy〉の軌跡が見られる本になると思います。

沖嶋さんの仕事のアウトプットの幅はとても広く感じますが、その全ての美学やクオリティーの基準としているものはありますか?

一貫性、相互作用のある美学は人を幸せにできると思います。それが一番大切だと考えています。

〈Stüssy〉の今後についてどんな想像をしますか? 変わらずこのまま、またはさらなる発展や実験的な試みをしていくと思いますか?

正直あまり変わらないと思います。もちろん市場や経済やトレンド、情勢などは変わっていきますが、〈Stüssy〉のスタンスは大きく変化しないでしょう。〈Stüssy〉とは同じ考えを持った仲間たちの集まりです。大人たちはそのスピリットを受け継ぐユースたちを常に歓迎しており育てています。近年の「Stüssy Inc.」の若いデザインチームはとても素晴らしい仕事をしています。時代が変わってもブランドのDNAは、同じ核を持つ才能ある若者たちに受け継がれていきます。僕が死んでからもきっと、〈Stüssy〉のスピリットを支える仲間たちが、いつもそこにいるはずです。

こちらの特集は『HYPEBEAST Magazine Issue 12: The Enterprise Issue』にてご覧頂けます(英文記事)。ご購入は各地の取扱店にて。

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