Interviews: Agi & Sam のデザイナー、アゲイプとサムが来日。彼らのファッションに対する想いとは?

ロンドン発のハイコンテポラリーブランド〈Agi & Sam〉を知る

ファッション 
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Agape Mdumulla(アゲイプ・ムドゥムラ)と Sam Cotton(サム・コットン)の2人が2010年に立ち上げ、ロンドンを拠点に展開するメンズブランド〈Agi & Sam(アギ&サム)〉。2013年6月に〈TOPMAN(トップマン)〉とのコラボコレクションを発表し、わずか数日で完売。同年、2 度目となる「British Fashion Award(ブリティッシュ・ファッション・アワード)」にノミネートされ、新人メンズウェア・デザイナー賞を受賞した。また、2015年には「LVMH賞」のファイナリストに残るなど、ファッション業界において新進気鋭ブランドとして注目されている。そんな〈Agi & Sam〉のデザイナーの2人が来日。ブランドのポジションを“ハイコンテポラリー”に置き、世界中でマーケットを拡大し続ける〈Agi & Sam〉は、どのような道を歩んできたのだろうか?

–二人がブランドをスタートさせることになったきっかけ教えてください。
2008年、僕たちが大学を卒業した当時のイギリスは酷い不景気で、きちんとした賃金を得られる仕事を探すのがとても難しい状況でした。そのため、やむを得ず無償でインターンとして働くことにしました。1年が過ぎてから、自分たちは何をすべきかということを強く考えるようになっていました。ブティックの店員やバーで働くなど就職するという道を選ぶより、自分たちでビジネスを起こすことを選びました。その決断が、ブランドを立ち上げる原動力になったのです。

–Alexander McQueen(アレキサンダー・マックイーン)のもとでインターンをしていたときに知り合ったという二人ですが、マックイーンと働くことで学んだこととはなんでしょうか?
大学時代にデザイン、パターン、カットとソーイング、いかにリサーチするか、全て自分の中から出てくる声に従って、進んでいきました。しかし実際には、すべての事をうまくリンクさせる方法について自問自答を繰り返していました。マックイーンでの経験を通して、そういった悩み、特にリサーチの方法について深く学ぶことがでできました。彼らの基準は幅広く多彩で、そうかと思えばテーマを深く掘り下げたり、1つのことに執着することもありました。そういったところに、大いに刺激を受けましたね。そしてこれらをコレクションの服、ディテール、素材、または雰囲気などに、どのように落とし込まれているか、実際に見ることができたのはとても興味深い体験でした。

–2015-16年秋冬コレクションで、Isamaya Ffench(イサマヤ・フレンチ) が作ったレゴマスクがとても印象的でしたが、ショウやクリエイションにおいて特に重要だと思うのはどんなところですか?
僕たちはランウェイでのパフォーマンスこそ、シーズンのコレクションのアイディアやコンセプトを伝えるためにとても刺激的で重要な役割を担っていると考えています。様々な制約と戦いながら、最善と思われる形で表現しています。我々は常にアート、音楽、文化や社会情勢などの影響を受けています。次回のコレクションでは、本当に僕たちならではの特別なものを提案しようと考えています。僕の頭の片隅にずっととどまっていたイメージこそ、今まさに提案すべき内容だと感じています。

–若手デザイナーとして注目を浴びていますが、現在のファッションシーンについてどう思いますか? 例えば、モードとラグジュアリーの垣根がなくなっていることなど。
僕は長い間、ファッション業界は崩壊していたと思っていました。コレクションスケジュールが非常にタイトなために生じるデザイナーへの負担、商品の納品時期等、様々な問題がありました。同時にこれらの問題はファッション業界に刺激を与えました。デザイナーが問題を解決していくプロセスは、同時に既成概念を覆すことになり、その結果大きな変化をもたらしました。デザイナーは勇気を持って、チャレンジするべきだと思います。チャレンジは進歩に欠かせない要素だと思っています。

–ニットアイテムも多く製作していますが、ウール素材のピースを作るときに一番こだわることは? ウール選びのポイントも教えてください。
ウールは僕たちがブランドをスタートさせて以来、ずっと使用している素材です。ウール素材を使用する余裕がなかった時には、ポリエステル生地の上にトロンプ・ルイユのプリントを施し、ウールに見える生地を作り使用したこともありました。1つのコレクションを制作する過程において、生地選びはデザイン作業が終了してから行われることが多いのですが、ウールは大変汎用性が高く、適応力のある素材なので最初に取り入れる素材です。

–今、注目している・気になる人やモノ、ブランドなどを教えて下さい。
僕たちにとって理想的な顧客はファッションのみならずデザイン、芸術、音楽、文化などにも興味を持っている人だと考えています。それらに深く関心を持ちながら、古い概念に囚われず、前向きに生きている人たちだと思います。僕たちがデザインする製品カテゴリーは、男性には常に馴染みやすいワードローブに基づいていて、例えば、マジックコート、SBコート、ハリントンジャケット、ボマー、スリムレッグ、ワイドレッグパンツなどがあります。これらのアイテムを着用することで、男性はコーディネートに自信を持てるようになるはずです。

–日本の印象について、また日本のファッションシーンについてどう思いますか?
日本は行ったことのない人に説明するが難しい国だと思います。日本のおもしろくて美しい文化はイギリスのそれと似ているようですが、やはり全然違う。僕はそういう日本の個性が好きです。ファッションシーンも同様で、高い水準のデザインと製造力を持っていると思っています。日本には国内外のブランドが集まり、多くのお店があることにより選択肢が豊富なので、流行りに乗るのではなく個性を重視することが重要だと思います。

–日本で気に入ったことは?
食、文化、都市計画、店舗の品揃えなどから非常に感銘を受けましたが、特に印象深かったのは人々です。誰もがとても親切で、本当におもしろかったです。新しい人との出会い、僕たちのビジネスを成長させるためにも、日本には訪れ続けようと思っています。

–今後のプランや展望を教えてください。
ここ数年は、ブランドとして、僕たちがどのように行動すべきか、そして消費者が僕たちに求めているものを見出そうと努力しています。そして僕たちは今、確実に新しいステージに立っていると感じています。デザインしたアイテムから、ランウェイ、ブランドのメインビジュアル・アイデンティティーに至るまで、ブランドイメージの確立に注力しています。アジアは僕たちの最大の市場となっています。そこで展開していくためには、ブランディングを明確にしていくことが必須となってきています。

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テキスト
フォトグラファー
Akiharu Ichikawa
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