Interviews: 『Richardson Magazine』の編集長、Andrew Richardson のクリエイションに迫る

最新号のクリエイションやアメリカ、日本の“性”について語る

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「Andrew Richardson」が編集長を務めるカッティングエッジなセックスマガジン『Richardson』の最新号A8がリリースされたばかり。その発売に合わせ来日したAndrewにインタビューを敢行し、最新号のクリエイションやアメリカという国、また日本の“性”に関してなどを語ってもらった。

—『Richardson Magazine』の最新号A8に関して。テーマが“アメリカ”だったのですが、どうしてそのテーマにしたのでしょうか?

僕はイギリス人なんだけど、実は去年アメリカ人になったんだ。25年もアメリカに住んでいたけど、去年ようやくアメリカの市民権というものを手に入れたんだよね。まず、それがテーマをきっかけかな。それと、なんとなく雑誌の方向性を少しだけ変えてみたかったんだけど、アメリカっていうひとつのテーマに沿って作り込んでいくのもおもしろいかなと思ったんだ。まあでも、僕のやることに大した理由なんてないよ。アイデアが、たまたま形になっただけのこと。雑誌を作るときも、いくつかのトピックを考えるんだけど、気がつくとそのうちの一握りが生き残って雑誌を構成していくんだよね。

—話が少し飛びますが、アメリカに移住することになったきっかけは?

当時、僕は若かったし、80年代後半のニューヨークがすごくかっこよかったからだよ。ほら、アンディ・ウォーホルのストーリーを読みあさって“Area”みたいなクラブに憧れるイングランドのキッズは、誰もがそこに行きたかったんだ。移住する機会があったのはラッキーだったし、自分がニューヨークに住み続けるかどうかは、ニューヨークの街が決めるんだ。この街で生きていけない人は離れていくし、許された者はチャンスに恵まれる。そんな感覚になる街だよ。

—ロンドンとニューヨークの違いって何だと思いますか?

そうだね、歴史というか、新しいものを受け入れる姿勢かな。今のニューヨークはちょっと変わった気がするけど、以前はすごく色々なものを受け入れて、試す姿勢があったよ。ロンドンはそれよりも古い歴史や習慣を重んじる土地柄だから、若い僕がニューヨークを選んだのも、可能性を試すのが楽しみだったからだよ。

—人に関してはどうですか?

ロンドンもニューヨークもきっと一緒だよ。いろんな人がいてみんなクールだしナイスだとおもう。ただ僕自身は、ニューヨークの方が立ち振る舞いやすいというか、何かしらの魅力をもって人と関わることができるんだ。イギリスではそんな風に感じたことはなかったからね。多分、外国人でいることで、みんなと違った視点でモノを見ることができる。それが僕にとってニューヨークの居心地の良さになったんだと思うんだ。

—スタイリストの経歴を持っているかと思うのですが、イギリスでもスタイリストをしていたのですか?

いや、僕はデザイナーとしてニューヨークに来たんだ。1年ほどデザインをしていたんだけど、フォトグラファーの「スティーブン・マイゼル」のアシスタントをする機会があって、そのまま彼のアシスタントとして3年働いたのち、自分でスタイリストの仕事を始めんたんだ。彼と働けたのはすごくいい経験だったよ。素晴らしい仕事をするとはどういうことかっていうのが理解できたからね。

—その後、雑誌を作り始めたということですか?

そうだね、彼(スティーブン)がマドンナのブック『Sex』を制作した時に僕も携わっていたんだけど、その時の経験が、僕自身のグランジっぽく、型破りでセンセーショナルでエロティックな美しさの表現へとつながっていったんだと思う。雑誌を作ることになったのは、そういう表現を続けるうちに浮き出てきた自然な流れだったように思うよ。決定的だったのは「林文浩」氏(雑誌『DUNE』の編集長・享年46歳)と仕事をしたことかな。彼が僕に、「君が“Sex”みたいな雑誌を作ったらきっとおもしろいよ」と言ってくれたのが、『Richardson』マガジンのきっかけだった。“Richardson”という名前も、実際彼が思いついたんだよね。

—今回のカバーで「Blac Chyna(ブラック・チャイナ)」を起用した理由は?

アメリカってすごくモダンな国だよね? それで、彼女の体もとてもモダンなんだ。彼女のヴィジュアルってナチュラルなものじゃないだろう? 人の手とテクノロジーが作った、未来のものだと思うんだ。きっと将来的に、人はエクササイズをしにジムに行くんじゃなくて、医者に行くようになるんだ。キレイな体と健康は努力ではなくてテクノロジーで手に入れる時代になる。彼女はそれを真っ先に体現した人物だと思うよ。9年前に、「ニッキー・ミナージュ」よりも「キム・カーダシアン」たちよりも先に彼女はこのモダンな体を作り上げたパイオニアみたいなものさ。昔の「マリリン・モンロー」、「オードリー・ヘップバーン」のような美しさの象徴が、現代のアメリカでは「キム・カーダシアン」、「ニッキー・ミナージュ」、そして「ブラック・チャイナ」なんだ。だからどうしも彼女を撮りたかった。この撮影を実現させるのには、ブッキングからかなり苦労したよ。でも僕は一度決めたら妥協できないんだ。彼女だと思ったら彼女を撮る以外になかった。だからリリースまでにいつもよりちょっとだけ時間がかかったね。

—美容整形についてはどう思いますか?

特に偏った考えはないよ。自然なことではもちろんないけど、医療技術の進化とともにもっと広まっていくものだと思うし、人工の内臓を持って、200歳まで生きるかもしれない未来のことを考えたら、美容整形だって当然あり得ることだろう?  個人的に興味はないけれど、否定するつもりもないな。そもそも他人の決断に意見しようとも思わないよ。本人が幸せならそれでいいんじゃないかと思う。それって大事なことだと思わないかい? 自分の理解が及ばないからといって批判するのはおかしいからね。

—あなたにとって、この号を通して見えるアメリカとは何ですか?

そうだね、今回は実際マイノリティにフォーカスした部分がたくさんある。ある意味、“Black issue”と言ってもいいんじゃないかと思うくらいにね。黒人社会をはじめとする、虐げられてきた人たちの苦悩や努力に興味があったんだ。マイノリティの人たちは、何かを手に入れたり主張するためにクリエイティブになる必要があった。面と向かって言うことを許されなかったり、お金では解決できなかったからね。そういうネガティブから生まれたポジティブなクリエイティビティにフォーカスしたんだ。そうだね、僕にとってのアメリカとは、若くてユニークな国だよ。たった500年ほどの歴史しかなくて、人々は大体他の土地から逃げてきた移民だし、あ、ネイティブアメリカンを除いてね。その上、奴隷として連れてこられた黒人たちがいたりね。むちゃくちゃだけど、何か楽天的なものを感じるよ。もちろん長い間議論が止まない問題も作り上げてきたし、それはこれからも続くだろうけど、こんな国、他にないよね。すごく素敵な自然を持っているし、これからも新しいアイデンティティを模索している国でもあると思う。複雑だけどね。

—今、アメリカで注目している人はいますか? あなたにとって興味深い人は?

おもしろい人はたくさんいるけど、飛び抜けて興味をそそる人……そうだね、「カニエ・ウェスト」はいろいろな意味で気になるね(笑)。

—もし、今後日本をテーマにした『Richardson』マガジンをつくるとしたら、誰を表紙に考えていますか?

それはまだわからないな。いくつかアイデアはあるけど決められていないよ。でもフォトグラファーは「森山大道」か「ホンマタカシ」にお願いしたいな。「荒木経惟」には以前、お願いしたんだ。とてもよかったよ。それと、日本のテーマで作るとしたら性について描きたいことがたくさんあるよ。ものすごく興味深いアダルトカルチャーばかりだからね。世界中みんな同じ人間で、同じ欲求を持っているのに、神道とか仏教ってキリスト教やユダヤ教とは全く違ったマナーで性を扱うし、そういった文化で育ってきたアダルトカルチャーにフォーカスするのはおもしろいと思うんだ。

—年内の新しいプランなどはありますか?

アパレルコレクションと新しいイシューの制作に取りかかるだけ。前に進むだけだよ。

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